スタティックルーティングはルーターがパケットを目的のネットワークに転送するために、ネットワーク管理者がルーターへ手動で設定した宛先へのネットワーク情報に従って転送するルーティング方法の1つです。比較的小さな規模のシンプルなネットワークで利用されます。
先日頂いた質問の中でルーティングに関する内容があり、一般的な家庭や小さなオフィスのような環境でも使用する機会があるようですので、今回は複数のネットワークが共存する環境例を用いながら基本動作を解説していきたいと思います。
ルーティングとは経路選択と転送
ルーターのようなネットワーク機器にはルーティングの機能が備わっており、機器に届いたパケットを宛先のネットワークへ届けるために経路選択を行います。
ルーターに届いたパケット毎にそのパケットの宛先とルーター自身が持つルート(経路)情報を照らし合わせて最適なルートを選択してそのネットワークの方向にある次のルーターへ転送します。このような動作をルーティングと呼びます。
ルーティングの方法は大きく分けて2種類
ルーティングの種類には、その設定方法により大きく2種類が存在します。
スタティックルーティング(静的ルーティング)
ダイナミックルーティング(動的ルーティング)
1つはネットワーク管理者が経路を設定しその設定情報に従ってルーティングするスタティックルーティングです。これとは別にルーティングプロトコルを使用してルーター同士が自動で経路情報を交換しあうダイナミックルーティングもあります。ダイナミックルーティングでは、経路の追加や削除があっても自動で常に最適なネットワーク経路が計算され使用されるためネットワーク管理者の負担を減らすことができます。
ダイナミックルーティングの機能を利用するには、ビジネス用ルーターのような高機能なルーターが必要になります。また、ダイナミックルーティングはスタティックルーティングと比べルーターへの処理の負荷も高いです。
スタティックルーティングとは
スタティックルーティングは主に小さい規模のネットワークで使用します。経路情報が少ない場合や代替経路のような複数経路がない場合はネットワーク管理者による手動設定で設定を行うことが一般的です。
ちなみに、ルーターに手動で設定したルート情報をスタティックルートと呼び、この設定を使用してルーティングすることをスタティックルーティングと呼びます。
ルーターは初期の状態では自身が直接接続しているネットワークの情報しかもっていません。そのため、自身が持っている以外のネットワーク情報はネットワーク管理者がスタティックルートを設定する必要があります。
スタティックルーティングに必要な基本情報
スタティックルーティングを設定する場合は、宛先のネットワークとそのネットワークへ到達するために転送する次のルーターのIPアドレスの情報を設定します。ルーターに設定されたルート情報はルーティングテーブルという場所に記録され経路選択時に参照されるようになります。
基本的なスタティックルーティングの設定に必要な設定。
・宛先ネットワーク
・転送するルーターのIPアドレス
デフォルトルートの使い方
インターネットのように膨大なネットワークが存在する場合、ひとつひとつのネットワークを設定することは不可能です。そのため、その他すべてのネットワークを意味する宛先を使ってルートを設定することができます。このルートをデフォルトルートと呼びます。
スタティックルーティングを使用する例
一般的な小さな家庭やオフィスは以下のようにLANとインターネットを相互に接続するためにルーターが設置されていることが多いかと思います。
インターネット向けのパケットはデフォルトルートに従い転送されていることとします。
「ルーターA」のルートは以下のようになっているはずです。
宛先ネットワーク | 転送先 |
---|---|
ネットワークA | 自身のインターフェイス |
その他すべてのネットワーク | インターネット側のルーター |
この構成に1つネットワークを追加します。
方法はルーターのインターフェイスを増やしたり、L3スイッチを追加したり、VLANを設定したりといろいろ考えられますが、ここでは単純にインターネットルーターのようなルーターを「ルーターB」として1つ環境に追加してみます。
このような構成を作る場合には追加したルーターにはインターネットルーターと同じようにインターネット向けのデフォルトルートが必要になります。さらに、それに加えてルーターAへネットワークB向けのルート設定が必要になります。
赤色マーカーの部分がスタティックルートの追加設定が必要になる部分。
ルーターA
宛先ネットワーク | 転送先 |
---|---|
ネットワークA | 自身のインターフェイス |
ネットワークB | ルーターB |
その他すべてのネットワーク | インターネット側のルーター |
ルーターB
宛先ネットワーク | 転送先 |
---|---|
ネットワークA | 自身のインターフェイス |
ネットワークB | 自身のインターフェイス |
その他すべてのネットワーク | ルーターA |
まとめ
今回はルーティングのお話しだけでしたが、追加したネットワークにある端末がインターネットと接続するためには、インターネットルーターにLANからインターネットへ出る際にIPアドレスの変換を行うための設定も必要になったり、環境によってはアクセス制限などの設定も見直しが必要になるかもしれません。
ネットワークを追加する方法も1つではないので、事前知識としてある程度のネットワークに関する知識が必要になります。
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